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移植に際して


Q 移植のリスクとして、危険なものに感染症があるとのこと。どんな症状が出るのでしょうか。
A 移植を受けるには、患者の細胞を抗ガン剤や放射線照射でなくさなければなりません。そのために、白血球がなくなり免疫が低下しているので感染の危険がかなり大きくなります。

特にサイトメガロウィルス(CMV)の感染によっておこる間質性肺炎は致命的になります。また、自分の体にあるヘルペス(HSV)の原因ウィルスが出てきてしまうこともあります。

予防のために、CMVに対する抗体を多量に含んだガンマグロブリン製剤やガンシクロビルという抗ウィルス剤を使います。




Q GVHDとはなんでしょうか。移植をすると、必ずなってしまうのですか。
A 移植片対宿主病といいます。ドナーの造血幹細胞が患者の組織、各種臓器を自分と異なる組織と認識して攻撃するために起こる症状です。急性のGVHDは、移植後5日から100日ぐらいの間に起こります。症状の程度は、個人差がありますが血縁者間移植より非血縁者間の方が重くなる確率は高いです。

標的となる臓器は、皮膚、肝臓、消化管などです。一番最初に現れるのが皮診です。手のひら、足の裏、顔面、腹部などに現れ軽度のものから水疱状になったり、表皮剥離になる重度のものまであります。肝臓の障害としてはビリルビンの上昇で黄疸が出ることもありますが、もっとも危険なのが合併症としてVOD(肝中心静脈閉鎖症)です。肝臓はたくさんの細かい血管があります。肝臓に障害が起こるとその血管が詰まってしまいます。そのため、肝脾腫、体重増加、腹水、輸血抵抗性血小板減少、腎不全などの症状が現れることがあります。

GVHD予防には、免疫抑制剤のMTX(メソトレキセート)やシクロスポリン(サンディミュン CYA)が用いられます。いずれも、腎障害や中枢神経の障害などの副作用があるため、血中濃度をよく調べながら量を調整します。

消化管障害としては、下痢になります。水のような激しい下痢になることもあります。上部消化管障害としては、嘔吐、食欲不振になります。その他に、口内炎、結膜炎になることもあります。だれもが、必ずなってしまうわけではありません。

比較的元気に過ごす子どもから、致命的症状になってしまう子どもまでさまざまです。




Q 移植をするときに中心静脈カテーテルを入れると言われました。どうしてですか。
A 無菌室に入ってからしばらくすると、下痢や吐き気などで体調が悪くなり食事がとれなくなります。その時、栄養補給のために高カロリー輸液(ハイカリック)を点滴からいれます。腕などの末梢血管からでは、濃度が濃くて入れられないので、心臓に近い静脈にカテーテル(CV)を入れるのです。

移植中は頻繁に採血をするので末梢血管からでは、子どもへの負担も大きくなってしまいます。また、CVを入れると両手が自由に使えます。薬などもCVからいれますが、移植の骨髄や輸血の時は末梢から入れます。

CVを挿入する時は、心臓や、肺の近くなので全く危険がないといいきれません。医師からの説明を受けて承諾書を書くことになります。挿入するのは、心臓班の医師になると思います。




Q 移植を受ける前には、どんな検査をするのでしょうか。
A 移植に伴う治療を行うと感染の危険があります。そのため移植前に、炎症や出血を起こしているところはないか検査をします。

眼科、耳鼻科、歯科、心電図、心臓エコー、腹部エコー、腹部CT検査、放射線の位置決めなどがあります。

炎症などトラブルがあると移植日がずれてしまったり、中止になってしまうこともないとはいえません。

移植が決まったら、歯科や、耳鼻科など治療に時間がかかるところには、早い時期に受診し、治療をすませておきましょう。




Q 移植前の前処置とは何ですか。何故おこなうのですか。
A ドナーの造血幹細胞を患者に生着させるには、患者の造血細胞を死滅させなければなりません。そのために、移植の前に大量の抗ガン剤を投与します。

また、全身に放射線をあてる全身照射(TBI)を行います。TBIは、やらない場合もあります。

これらは、移植に必要な処置なのでさけてとうるわけにはいかないのですが、また、副作用も強く、最低限の量でなおかつ生着が可能となる分量の見極めが難しいようです。

疑問や心配な点など医師に聞いてみましょう。

リスクを含め納得して治療に取り組むことは大切なことだと思います。




Q 前処置を行うときに膀胱洗浄を行うとのこと、どのようにするのですか。
A 大量の坑ガン剤サイクロフォスファミド(エンドキサン)を使用するので、細胞が一気に壊れて尿の中に出るため、膀胱を洗浄して炎症を起こさないようにします。(出血性膀胱炎予防)坑ガン剤を行う2日間、2〜3時間おきに行います。あらかじめ尿管に管を入れておき生食液を注入してそれを抜くことを3〜4回繰り返します。学童以上の子供は、膀胱洗浄の機械で行い、幼児はシリンジで行います。切ないですが治療のため、がんばりましょう。



Q 抗ガン剤は副作用があると思いますが、どういうものですか。
A 移植前の前処置には、大量の抗ガン剤を使います。シタラビン(Ara-C)、ブルスファン(BUS)、シクロフォスファミド(CPA)、エトポシド(VP-16)などが用いれます。

副作用としては、吐き気が強く出ますが幼児の場合比較的軽いこともあります。以前に比べとても効果がある吐き気止めもありしのぎやすくなってします。

髪の毛が抜けるので前処置の前に切ってしまいます。クリーンルームは空気が循環しているのでそのままにして髪が抜け落ちると衛生を保つことができにくくなってしまいます。年齢の高い子どもや女の子などは、とても抵抗があるようです。入院中もかぶれるキャップやバンダナなども事前に用意しておいたほうがいいかもしれません。

髪の毛は、移植後1〜2ヶ月位からはえ始めます。半年もすれば男の子ならカットしなければいけないくらい伸びています。一時的なことであることを話してあげてなぐさめてあげましょう。

臓器障害は、肝臓、腎臓、心臓に起こる可能性はありますが、医師も体重や病気のリスクによって行うので大きな危険はないと思います。




Q 前処置に放射線もかけるといわれました。なぜでしょうか。
A 抗ガン剤だけでは、殺しきれない細胞があります。細胞が残っていると生着する確率が少なくなったり、患者の造血細胞が増えてくる可能性も大きくなります。

特に、臍帯血移植の場合、骨髄移植に比べて抗体が少ないため患者自身の造血幹細胞が残っていると生着率が低いといわれているので放射線の全身照射は避けられないと思います。

骨髄移植の場合かけないこともあります。

全身放射線照射(TBI)は、一般的には、化学療法の後に行われますが放射線科の状況によっては、TBIの方が先になることもあります。体の体積によってかける量が決まります。

移植自体を成功させるためには、生着しなければならないのでTBIは必要なのですが、やはりリスクもあります。最初のころは、吐き気、嘔吐、下痢などがあります。抗ガン剤も同じような副作用があるのでこれはどの子も苦しみます。下痢はかなりひどく水のようになってしまうので大きい子どもでもおむつが必要になります。

さらに、口腔粘膜炎、色素沈着、脱毛があります。晩期障害としては、ホルモンの異常が起こって身長が伸びにくくなったり、不妊症になるなどが考えられます。

ムコ多塘症の場合もともとの病気が原因なのか、副作用なのか判断しにくいかもしれません。移植後は、身長の伸びを定期的に計って、年間1cm以下の伸びになった時は、ホルモンの検査も受けるようにしましょう。

不妊に関しては、移植を受けた患者の中で、日本でも男女一人ずつ子どもができたという報告があります。




Q 無菌食とは何ですか。禁食になることもあると聞いたのですが、子どもはがまんできるのでしょうか。
A 感染予防のために移植の1週間前くらいから高圧ガスで滅菌された食事を食べます。体内を無菌化するためです。無菌食が始まると市販のお菓子なども食べられません。

小さい子どもにとっては、つらいことですね。移植が決まったら、できるだけ好き嫌いなくいろんなものが食べれるように、また、間食の習慣なども見直して、決まった時間におやつを上げるようしておいたほうがいいでしょう。

無菌室の中でも、食べ物を差し入れることはでません。ただし、ジュースなど果汁のほとんど入っていないものなどは、入れることができるでしょう。メニューなどで希望がある場合看護婦さんに伝えておけば調理に工夫をしていただけます。嫌いな食べ物などもいっておくと除いてもらえるでしょう。もちろんアトピー等、除去するものがあれば入院時に伝えましょう。

子どもの多くは、前処置の段階で食欲がなくなってきます。薬の副作用や、GVHDによる下痢などが始まった場合は、症状を悪化させないためにも禁食になります。CVから、高カロリーの栄養が入っているので禁食になってもそのことで体調をくずすことはありません。ただ、子どもは、口さみしくて、あれこれ食べたいといって困らされることでしょう。退院したらいっぱい食べようね、と励ましてあげるしかないかもしれません。

移植をうけた大人の人でも一番辛かったのが禁食になったことだという人もいるくらいです。切ないですが治療のため、がんばりましょう。




Q 口腔内殺菌や消化管殺菌が必要ということですが、どのようなことをするのですか。
A 移植の時、感染の危険が大きくなるので口から菌がはいらないようにイソジンうがいをします。その後フロリードゲルという抗真菌薬を口の中に塗ります。一日、朝、昼、夜、寝る前と4回やらなくてはいけないので、小さいお子どもだとかなり大変でしょう。しかし、これは無菌室に入っても続けなければならないし、きちんとやらないと口内炎で苦しむことになるのでこどもに言い聞かせてがんばらせましょう。

また、無菌食開始と同時におなかの中を殺菌するために薬を飲みます。徹底的に体の中から、菌をなくしていくと言うことです。医師によって処方する薬が少し違うようですが、バンコマイシン、ポリミキシン、ナイスタチンなどです。この薬は、とても苦くて大人が飲むのも苦痛です。一度子どもに飲ませるとき、なめてみて下さい。こんなに苦い薬は、普通の方は経験したことないと思います。これを子供たちは、一日に2〜3回飲まなければなりません。うまくの飲めなかったり、せっかく飲んでも出してしまったりすることもありなかなか上手くできなくて、親も子もストレスがたまります。でも、この味が分かっていれば怒ることはできないと思います。どうか、上手に飲めたときは、ほめてあげて下さい。

カプセルが飲める子には、滅菌したカプセルに入った薬が出ます。移植が決まったら5才以上の子どもならビタミン剤など錠剤を飲む練習をしておくといいかもしれません。これが飲めると苦い思いをしなくっていいので治療が少しは楽になるかもしれません。




Q 移植は、無菌室で行うということですがどのような部屋ですか。
A 移植の前処置のための化学療法やTBIを行えば感染しやすい条件ができてしまうわけですから、外部からの感染源を遮断するための、無菌的環境を保たなければなりません。患者の状態が安定し、感染に対抗する白血球がある程度あがるまで無菌室で過ごさなければなりません。

移植の行われる無菌室は、二重に無菌化されていてにはいます。患者の過ごす部屋と、治療のための薬や機具が保管されている部屋があります。

無菌室には、原則として医師と看護婦さんしか入れません。入室する人は帽子、マスク、白衣、手袋を身につけて感染予防をします。

子どもの生活の全てがこの部屋の中で行われます。おまるやトイレ、洗面所、料理を温めるためのレンジ、テレビやビデオゲーム機なども中にあるか入れることができるでしょう。移植の前に子どもと一緒に見学し、ここで過ごすことを理解できるよう説明をして納得させておくといいでしょう。家庭にいるときから話しておくといいかもしれません。

家族はガラス越しに顔をあわせて部屋とつながっている電話で会話をします。最初ガラス越しの会話は切ないものですが、子どもはガラス越しであっても家族の面会を心待ちにしています。ガラス越しに遊べることをいろいろ工夫してみましょう。本の読み聞かせや、紙芝居、じゃんけんや、にらめっこ、しりとりなど子どもの体調のいいときは遊びがとっても大切です。中には、無菌室にいる間に子どもと物語を作っていったという人や今まで以上に絆が深まったというお母さんもいらっしゃいます。 しかし、幼児の場合、お母さんの顔を見てしまってかえって辛い思いをさせてしまうこともあるので、医師や看護婦さんと話し合って顔をあわせる時期を考えた方がよいと思います。

薬やうがいなど子どもにとって大変なことも、看護婦さんと一緒に優しく励ましの声をかけてあげましょう。




Q 無菌室にはどんなものが入れられるのでしょうか。必要なものはどんなものでしょう。
A 無菌室に入れるものは、すべて滅菌消毒します。パジャマや下着の着替えは、年齢によっても違いますが、10〜20組必要でしょう。その他に、タオル、タオルケット、靴下、カーディガンなどです。高圧蒸気滅菌するので着替えのパジャマや下着などは、綿製品を準備します。化繊やゴムなどは痛んでしまいます。新品を用意する必要はないのでパジャマでなくっても着古したTシャツや、ズボンなどで充分です。

また、おむつ、ティッシュなど消耗品も沢山必要になります。

また、長い期間閉鎖的な環境で過ごすわけですから、少しでも過ごしやすくするために、子どもの好きなビデオ、ゲーム、おもちゃ、本なども必要になります。これらのものは一度にたくさん入れてしまうと飽きてしまうので、子どものようすを見て少しずつ足していくといいでしょう。

クレヨンやペンのりやセロテープ、はさみなども入れておくと手紙を書いたり工作をしたりして時間を過ごすことがてきます。看護婦さんが子どもと一緒に雑誌の付録を作って下さったこともあります。 棉、紙以外の高圧蒸気滅菌できないものはエタノールでスプレーしたり拭いたりします。

無菌室に入る2週間くらい前には、滅菌しなければならないのですが、看護婦さんやBMTを経験したお母さんたちから情報を集めて少しずつ用意をしておいた方がいいと思います。すべてを買うとなると大変なので譲ってもらえるもの、借りられるもの、買わなければならないものをリストアップして周りの人に協力してもらうのもよいと思います。




 

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