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ムコ多糖症ハンドブック


Q ムコ多糖症と診断されました。いったいどのような原因でこのような病気になったのでしょうか。
A 体は、細胞でできています。細胞をつなぎあわせる役割をになっているのがムコ多糖でゼリー状の物質です。細胞には、それぞれ寿命があり、生まれ変わっています。そして、ムコ多糖も古くなれば代謝されるようになっています。代謝をうながすためには、ムコ多糖を分解するための酵素が働いています。

この酵素が存在するのは、血液の中の白血球にあるリソゾームと呼ばれているところです。血液は、体内を循環し、全ての細胞に毛細血管でつながっています。古くなっていらなくなったムコ多糖は、血液を通じて酵素によって分解され代謝されていっているのです。

ところが、ムコ多糖症の子どもたちは、このムコ多糖を分解するための酵素を持っていません。

何故持っていないかというと、酵素を作る命令を出す遺伝子に異状があるためです。

分解をうながす酵素は、いくつかの種類があって、その種類によって障害のでる場所がことなっていくのでそれぞれを分類しています。

ムコ多糖を分解できないと、どのような症状がでるのでしょう。

古くなってちゃんと分解できないムコ多糖は、体内のいたるところでたまっていきます。肝臓や脾臓などの臓器に付着して臓器を肥大させ機能の低下をまねきます。また、骨の軟骨に付着しやすく骨が変型していって歪んでいきます。背も伸びにくく低身長です。皮膚にもたまっていくので固まりが湿疹のようになることもあります。耳や目に障害を起こす事もあります。また、脳にも蓄積する場合もあり、脳が萎縮し水頭症になって知能障害が出たりします。

遺伝子の異状が原因なので、背が低いからといって、カルシュウムが不足しているとか、成長ホルモンに問題があるという事ではないのです。




Q 進行性というのは、どのような意味なのでしょう。
A ムコ多糖症では、分解されなかったムコ多糖が蓄積することによって、徐々に障害が現われます。生まれた時は、他の子どもたちとあまり違いを感じない場合がほとんどです。 ムコ多糖は、体内で徐々にいろいろなところにたまっていって、何年もたってから障害が現れていきます。

両親がなんらかの症状に気がついた時に、そこが急に悪くなっのではないのです。また、その時点で検査をすれば他にも障害がでてきていることがわかるはずです。発症は、その子が生まれたその時から始まっているといっていいでしょう。

また、症状は、よくなっていく事はありません。ムコ多糖は、どんどん蓄積し、障害は、時間が立つにつれ厳しくなっていく事を覚悟せざるをえないでしょう。 普通一般的に、子どもは成長し、身体的にも知的にも発達していきます。3才より5才、5才より10才といろいろな力をつけていきます。

ところが、ムコ多塘症の子どもたちはある時期までは他の子と同じように発達していくのですが、ある時期からは、発達が遅れだしやがて止まってしまいます。そして、時間が経過すると今まで持っていたはずの能力まで失われていくのです。

転びやすくなり、歩けなくなる。おしゃべりだった子が言葉を失っていく。難聴がすすむなど症状が進行していきます。

症状のでかたや、程度などは、それぞれに異なります。1才になってすぐに症状が出てくる子どももいれば、成人になっても日常生活に支障のない人もいます。 ただ、どのような場合にも、それぞれの症状が進行していく事は、残念ながらさけられません。




Q この病気を治す事はできますか。
A 残念ながら、現在の医学では、抜本的な治療法は、確立されていません。理論的にいって一番優れていると考えられる治療法は、欠損している遺伝子を入れて、正常な遺伝子にしようとする遺伝子治療なのかもしれません。ただ、この治療は、技術的にまだしっかりとは確立されていません。アメリカでハンターの治療が試みられたようですが、その成果はまだ発表されていません。日本で一般的な治療になっていくのには、まだまだ時間がかかるでしょう。

また、酵素補充法というものもあります。それぞれの型の作れない酵素は判明しているので、その酵素を補充していこうという考えです。実際、ハーラーに関しては、治験がはじまります。

酵素は、たんぱく質でそれ自体に寿命があります。ですから2週間に一度くらいの間隔で静脈から点滴などで入れる事になります。これによって進行がくいとめられる可能性はあるでしょう。但し、今までに出ている症状がどこまで改善されるかは、わかりません。比較的軽症な人に効果が出やすいようです。

そして、骨髄移植やさい帶血移植などの増殖細胞移植があります。




Q 骨髄移植をすすめられています。骨髄移植はなぜ進行をくいとめるのですか。
A 骨髄移植とは、酵素を作っている白血球をふくむ血液そのものを正常なものに変えてしまおうという試みです。血液は骨の中で作られています。骨髄は、ゼリー状の液体で、血液の中のいろいろな成分を生み出す、造血幹細胞なのです。この造血幹細胞を移植によって患者に入れ、正常な酵素の作れる血液を生み出そうとしているのです。移植が成功すれば、体内に酵素がいきわたり、古くなったムコ多塘を分解してくれます。内蔵や、皮膚などにたまったムコ多塘は、しばらくすると代謝され、症状も改善されていくでしょう。 但し、骨の変型や、脳の障害などは残っていくと考えられています。

さい帶血移植に関しても、同じ効果があります。さい帶血も骨髄と同じ増殖幹細胞だからです。




Q 骨髄移植のリスクはどんなものがありますか。命にかかわることもあると聞いてとっても不安です。
A 骨髄移植に伴うリスクは、大きくわけて二つあります。一つは、自分の骨髄を放射線照射や、抗癌剤でたたいてなくしてしまう事によって起こるものです。

自分の骨髄、特に白血球が残っているとドナーからもらう骨髄が生着しません。自分の白血球の抗体がドナーの骨髄を異物と認識して排除してしまいます。そこで生着をうながすために前処置として、放射線照射や、抗癌剤の投与がおこなわれます。生着のためにはさけられないこの前処置ですが、自分の白血球がなくなるということは、感染症に対して無防備になってしまうということなのです。移植後すぐの白血球が0に近い時はもちろん、移植後ドナーの骨髄が無事生着しても、増殖し白血球数が正常になるまでには、時間がかかります。その間、感染症にかからないように注意をします。でも、サイトメガロウイルスなどすでに感染しているウイルスが出てきたりする事もあり、効く薬がないものもあるので時には、感染症で亡くなる患者さんもいます。

もうひとつのリスクとしては、GVHDとよばれるもので、ドナー由来の免疫担当細胞が患者の各種臓器を攻撃する反応です。発疹が手足に出るくらいの軽いものから、多臓器不全になって亡くなる場合もあります。




Q 酵素補充法という治療法があるとききました。骨髄移植など造血細胞移植とどう異なるのでしょうか。
A ムコ多糖を分解する酵素を血中に入れる事によって、病気の進行をくい止めようとする酵素補充法は、骨髄移植など造血細胞移植と比べてリスクが少ないというメリットがあります。

自分の造血幹細胞をそのままに酵素を補充するので特別な前処置を必要としません。患者は定期的に病院に通い必要な量の酵素を注射か、点滴で静脈へ入れていきます。間隔は二週間に一度くらいになるでしょう。 ただ、この方法では、ずっと酵素を入れ続けなければならないので病院に定期的に通い続けなければなりません。また、入れる酵素は一般の人が持っている量の3%程度です。それだけでも症状を進行させない可能性は充分あります。

一方、リスクが大きいけれど骨髄移植など造血細胞移植が成功した場合、自分で酵素を作りつづける事ができます。また、その量も一般の人と同じ量が生み出されます。酵素は全身の細胞にいきわたり今まで付着していた古いムコ多糖のきれっぱしも分解してくれる可能性があります。移植後の検査などやはり定期的に通うことになるでしょうが、その間隔は、だんだんとあいていって、半年に一度位の受診になっていくでしょう。

費用は、移植に関しては小児特定疾患の医療費免除を受けられます。ただ、差額ベット代の自己負担があるのと、ドナーが家族にない場合ドナーに関する費用が患者負担になります。

一方、酵素補充法は、現在治験の段階なので自己負担はありませんが、対象者は限られいろいろな制約を受ける可能性があります。また、現在はムコ多糖症は二十歳まで医療費の控除か受けられますが成人になったら医療控除の対象でなくなってしまいます。酵素治療は高額な治療法なので医療費の負担が大きくなる可能性もあります。

将来的により安全で治療効果の高い治療法が出てくる可能性があるならそれまでのつなぎとして酵素補充法を考える事もあるかもしれません。

ただ、1999年5月現在の状況では、治験が始まるのはハーラーのみで、対象者は、知的障害の軽い年齢の低い患者になるのではないかと考えられます。




Q 遺伝子治療とは、どんな治療法ですか。
A 遺伝子治療とは、欠損している遺伝子機能をベクターと呼ばれるウィルス等にのせ遺伝子に導入しようとする試みで、理論的には遺伝子疾患で永久的な治癒をもたらしうる治療法と考えられています。

1989年ADA欠損症の子どもに用いられて以来、国内でも一例の実施例がありますが、どの場合も酵素補充法を継続しています。

この治療法だけで疾患の改善をもたらしたものはまだなく、今後の研究に期待したいものです。




Q さい帯血移植と骨髄移植では、効果やリスクはどのように異なるのでしょうか。
A 基本的には、どちらもそ造血幹細胞を移植する治療法です。患者が受ける治療の流れとしては、ほとんど変わらないと考えていていいでしょう。

ただ、骨髄と、さい帶血では、同じ前処置をした場合、さい帶血では、生着率が低いといわれています。さい帶血には、抗体がほとんどなく、そのためGVHDが出にくいというメリットがある反面、患者自信の増殖幹細胞が残っている場合それを排除する力が弱いようなのです。

ですから、さい帶血移植の時には、前処置をしっかりしていく必要があります。骨髄移植なら、放射線照射は少しか、時によってはしない場合もありますが、さい帶血移植のときには、全身照射が必要のようです。患者の状態によっては、前処置に限界があります。

移植効果がどのように違うかは、データーがないのではっきり言えません。ただ、さい帶血が生着した場合、増殖力が強いので効果がより望める可能性はあります。

また、ドナーが家族間にない場合、HLAの一致するドナーを探す期間は、さい帶血の方が早いでしょう。ただ、現在バンクに保存しているさい帶血の数が少ないので合うものが見つかる可能性は、骨髄バンクの方が高いでしょう。

どちらで移植をするかは、主治医とよく話し合い患者の状態を把握した上で検討しましょう。




Q 骨髄移植や、さい帶血移植によって何が変化しますか。子どもの性格や容姿や、体質などがかわってしまうのでしょうか。
A 血液中にある情報に関しては、ドナーの持っているものになっていきます。たとえば、赤血球の型がAからBに変わったり、白血球の染色体が男性のものから女性のものになったりします。免疫の情報もそのまま受け継ぐので、アトピーなどの体質も受け継ぐ可能性があります。

ただ、容姿や性格など遺伝子によるものが変化するわけではありません。あくまで血液に関する情報が変わるだけです。

なお、さい帶血移植の場合は、ドナーの抗体自体が作られていないのでドナーの影響を比較的受けにくいと考えられます。




Q 国立病院、大学病院、市立病院、私立病院などいろいろな病院がありますが、どう違うのですか。どこにかかればいいのでしょう。
A 私たちは、まず自宅に近い病院を選びがちですが、もし、移植を考えて受診するとしたら、どんな病院を選べばいいのでしょうか。

まず、ムコ多糖症に対して理解がある病院でなおかつ移植など治療に対しての情報も持っている病院ということを考えれば、代謝の専門医がいて、なおかつ血液内科の専門医がいる病院を受診するのがいいでしょう。

しかし、小児科の場合、診療科目を明確にしていない病院がほとんどです。

一般的に、私立の病院で移植は、行いません。また、市立病院でも、数は少ないでしょう。県立の子ども病院には必ず血液の先生がいますが、代謝疾患の移植の情報が行き渡っているかどうかは疑問です。

ムコ多糖症の親の会では、今まで移植を受けた患者がどの病院にかかったかの情報を持っています。移植を受けられる大学病院も限られているのでこれから受診しようと考えている人は問い合わせてみて下さい。




Q 移植の設備はあるのですが、代謝疾患の移植例がないとのこと。大丈夫でしょうか。
A 地元で探そうとした場合、代謝疾患の移植例がないといわれることは、多いと考えられます。移植例がない事で心配な事はどんなことでしょう。

ひとつには、移植に関わる先生方に代謝疾患に対して充分な理解をしていただけるかどうかという事があるでしょう。その上で内蔵疾患など現在患者が抱えている症状を考慮した上で前処置の薬や放射線量を決めていただく必要があります。

そのためには、血液の先生だけではなくいろんな代謝をはじめ各診療科目の先生方でチーム医療をやっていって下さる病院であれば安心してお願いできるのではないでしょうか。




Q 移植適応になる患者と、ならない患者はどのような線引きをするのですか。
A 主治医によっては移植を進められる場合と、否定的な意見の先生とがいらっしゃるでしょう。では、どのような場合移植を考え、どのような状態の時移植を断念するのでしょうか。 移植には、リスクがついて回ります。それも、時には、命にかかわるGVHDや感染症も考慮しなくてはいけません。また、海外での移植データーなどから、移植効果がどの程度あるのかも考えていくべきです。

まず型によって効果がはっきりしているものと、そうでないものがあります。ハーラー、マルトラミ−、ハンターの軽症型などは、生後できる限り早い時期の移植であれば顕著な改善が期待できるようです。

それ以外の例では、効果は、あまり期待できないのでは、というのが一般的な考えのようです。

でも国内でも、年齢が高い患者や、症状の重い患者での移植例はあります。

保護者が移植によって何を望むかによって、移植への道が開けるのではないでしょうか。移植を受ければ、健常児と全く同じようになるというようなイメージを持つのであれば、移植の効果はあまり期待できないでしょう。

でも、多くの場合移植によって、病気の進行をとめる事は可能です。また、内蔵や皮膚にたまったムコ多塘は、分解され体調はよくなっていくでしょう。骨の変型を治す事はできなくても、関節は柔らかくなり稼動域は広がります。日常のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)は、向上します。

ただ、脳への進行が進んでいたり、内蔵疾患がすすんでいる場合移植に耐えられない事もあります。

また、生着不全になった場合、前処置の副作用を受けて、今より状態が悪化する事も考えられます。また、前記したように、命にかかわるリスクもあります。 症状のまだ進んでいないときに移植をするのがベストではあるもののまだ元気にしている子どもに、痛くつらい治療をさせなくてはいけないと思うと躊躇してしまいます。

主治医の意見はもとより、移植を受けた方や、セカンドオピニオンとして、もう一箇所病院を訪ねてみるのもいいかもしれません。

患者家族に不安やためらいがある場合、先生が強く進められるという事は、決してないでしょう。リスクを知った上で、患者家族が強く治療を望むことでやっと可能性が出てくるというのが現状ではないでしょうか。




Q 移植には、HLAのあうドナーが必要だといわれました。HLAとは何ですか
A 一般にA型B型などといわれている血液型は、赤血球の型です。簡単にいうとHLAは白血球の血液型だと思ってください。正確に言うとヒトの主要組織適合抗原をHLA抗原といいます。このHLAがあっていないと移植はできません。

HLAの遺伝子は、A座 B座 C座 D座 DR DQ DP という7つの遺伝子座があります。バンクドナーでも兄弟のドナーでもまず、A B C座を調べてあっている場合に、D座 DRを調べます。この5つがあえばパーフェクトです。移植が可能になります。

血液疾患等の患者は、時には1つが合っていない(ワンローカスミスマッチ)場合または、2つあっていない(ツーローカスミスマッチ)でも移植を試みることがありますが、いずれにしてもかなりの危険が伴います。

ムコ多糖症のような代謝疾患の場合、骨髄移植では完全一致のHLAのドナーを必要とします。不一致のものを使うリスクをおかすことは、まずないでしょう。ただし、さい帯血移植ではGVHDが出にくいというデーターがあり、ワンローカスミスマッチ、ツーローカスミスマッチでも移植の可能性はあります。




Q ドナーは、どのように探すのでしょうか。
A 患者とHLAが合う確立が一番高いのが、兄妹です。HLAは両親から半分づつ受継いでいます。兄妹間では四分の一が一致する可能性があります。

両親は、残念ながら、合う場合はほとんどないでしょう。

一番最初に、兄妹全員のHLAを調べます。合う人がいない場合両親の検査をします。全員が一致しないのが確認された場合、ドナーバンクに登録をします。 家族のHlA検査は、有料で自己負担になります。(一人3万円程度) 兄妹を確認して、両親を調べていく方が経済的ですが、検査結果がでるまでに2週間程度かかるので急ぐ時には家族そろって一緒に調べてもらう事もできます。

バンクへの登録は、医師でないとできません。予備検索は、どこの病院からでもできます。しかし、ドナーがいた場合、登録し、コーディネートして行くためには、移植の病院が決まっている必要があります。

なお、祖父母、叔父叔母、従兄弟など親戚で、HLAが合う確立は一般の方と同じ程度と考えてよく、費用の事もあるので特に検査はしません。

どうしても受けたい場合は、費用を負担して受けるか、ドナーバンクに登録をしてもらいます。バンクに登録すれば検査の費用はかかりませんが、他の患者とHLAが一致した場合移植に協力する意志がある事を確認しておく必要があります。




Q 兄弟間でHLAが一致しました。小さい子どもから、骨髄を採取して大丈夫なのでしょうか。どんなリスクがありますか。
A 兄弟間、または親子でHLAが一致している場合は骨髄バンクに登録できません。ですから、たとえ2才の弟妹児であっても骨髄の提供者になります。

自分の子どもを危険な目に遭わせたくないのはどの親も同じです。しかし、だからといって兄弟でHLAがあっているにもかかわらず、かわいそうだからとやらなければ病気の子どもが、移植を受けられなくなってしまいます。

親からの移植はともかく、病気を治すためとはいえ、二人の子供に、痛い思いをさせるのはかわいそうですね。

しかし、医師たちも健康な子どもに万が一のことがないよう万全を期します。ドナーとなる兄妹児は、移植の数週間前から、検査をします。血液(貧血)心電図、レントゲンなど、体調が整っていることを確認します。

そして、自己血をとります。これは、お子さんの年齢、骨髄の採取量によってとる量が違いますが、移植の時骨髄を一度にたくさんとるので貧血になることがあるためです。そのために、自分の血をとっておき骨髄採取の時に輸血するためです。自分の血液ならば、拒絶反応が出ることもありません。なにより安全です。 骨髄をとること自体は、そんなに危険はありません。やはり、心配なのは全身麻酔です。ごくまれに、麻酔の事故が問題になることがあります。

ドナーなった子どもは移植当日、さすがに辛そうですが翌日か、遅くても二日後には元気になります。傷の痛みも四日目から一週間くらいで落ち着きます。大人がドナーになったときよりも子どもの方が回復が早いということです。

兄妹間の移植にはメリットもたくさんあります。HLAが完全に一致していればGVHDがでることはほとんどないでしょう。その分回復も早まります。

また、移植後の状況によって、ドナーの白血球の立ち上がりが悪い場合、ドナーの輸血をすることによって、増殖を促すこともできます。万一、生着不全になっても、再度の移植を考えやすくなります。

マイナス面に目を向けるばかりでなく、このようなプラスの点も考えてみましょう。

バンクに登録したドナーの方たちは、名前も知らない未知の患者のために、リスクを知りつつ骨髄を提供してくれます。兄妹児も今は小さくて、痛い思いをしてつらいかもしれませんが、将来、自分の果たした役割を知り、充実した気持ちになると思います。




Q 骨髄移植など造血細胞移植の費用は、保険が使えるとのこと。無料ですか。移植には、莫大な費用がかかると聞いたのですが。
A 移植に関わる医療費は、保護者の保険と小児特定疾患の医療券を持っていれば原則的に無料です。但し、移植に関わる費用の中で患者が負担しなくてはいけないものがあります。

1、HLA検査費用
 一人3万円(兄妹、両親)。但し、HLAが合い、その病院で移植できる場合は患者本人と、一致した家族の検査費用は保険がきく。

2、ドナーに関する費用
 家族HLAの合う人がいない場合、ドナーバンクに登録をすると、ドナーに関する費用がかかる。国内で探す場合、順調に進んで50万円〜海外では数百万円かかる。

3、差額ベット代
 病院によって差額ベット代の負担がある。移植の前後は、感染症が命取りになるのでできるだけ感染症の患者との接触をさけるため個室や、二床部屋を使いたい。病院によって料金はまちまち。医療費控除の対象にはなる。

4、薬代
 移植に有効な薬のなかには、国内で認可を受けていないものもある。主治医から申し出が合った場合よく理解して使用する。

5、入院用品
 移植は、3ヶ月に及ぶ入院生活になるので、いろいろな生活用品をそろえる必要があるだろう。

6、家族の生活費
 地方から遠方の病院に入院することになった場合、二重生活を余儀無くされてしまう。付き添えない病院では、ファミリーハウスの利用や場合によってはアパートなどを借りる事になるかも知れない。また、兄妹児の託児に関する費用なども考えておく必要がある。見舞いに関する交通費、外食代などもかさむだろう。




Q 兄妹はいません。母親である私とひとつ以外全部合っているとか。移植は、できますか。
A 主治医の判断がどのようになるかでしょう。

HLAのどの部分が合っていないかにもよります。ワンローカスミスマッチの場合移植可能という判断になる可能性もあるでしょう。

ただ、GVHDが強く出る確立は高く、最善の方法とは言えないでしょう。完全一致のドナーを見つける手段があるのであればその方が安全です。

ドナーが見つからない場合、主治医から充分な説明を聞き子どもにリスクの少ない方法を選びましょう。

母親であれば自分の骨髄が使えるならそれを使いたいと願う気持ちは理解できます。ただ、感情で押し切って事故が起った場合、深い後悔をする結果にならないともいいきれません。

バンクにもない場合には、さい帶血移植も考えてみてはどうでしょう。さい帶血の場合は、ワンローカスミスマッチでもGVHDは出にくいといわれています。




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