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岡村慎吾くんのケース


中学1年生(12歳)。家族構成は両親、闘病児である11歳の妹の里奈ちゃんと、2歳の妹の加奈ちゃんの5人家族です。

慎吾くんは3人きょうだいの長男です。闘病児の里奈ちゃんはレックリングハウゼン病で慎吾くんが7歳の時から闘病しています。 現在は外来通院中です。



■どんな家族か教えて
加奈が2歳、里奈が11歳、(慎吾クンが)12歳…。 (里奈ちゃんは)手伝い嫌い。お母さんの性格ってどういっていいのかわからない…(沈黙)。 加奈は、敵対意識で(里奈ちゃんと)。 仮面ライダーとか好きなんだ。


■里奈ちゃんが入院してたのはいつぐらい?
いつぐらいって言うと…。 里奈が1年生ぐらいのときに。1年生の夏休みの間に入院した。 それが一番最初。2回目がよく覚えてないんだけど里奈が2年生のときの夏休みかなんか。 入院したんだけどそのときのことはあんまり良く覚えてない。…で。 里奈がいつだっけ…。1年間入院したのは3年生か…。 3年生のときに長い入院して、よく覚えてないけど4年生ぐらいの始めのときに帰ってきたような気がする。 その頃、おばあちゃんが死んだりいろいろあったから、なんかよく覚えてない。どたばたしてた。それくらい。 俺は5年生のときくらい。


■慎吾くんの生活はどうかわった?
入院しているときはお母さん付きっきりだった。結構。 あの、病院が遠いから9時ぐらいに帰ってくることが多かった。 夕ご飯…。夕ご飯とかは…。あれ?(笑)覚えてない。 今思うとどうしてたんだろうって感じなんだけど。

なんか、お母さん最初は結構いっぱい行ってたんだけど途中から1週間に3回とかになって。 それにね里奈がお母さんとけんかしたりして、お母さん早く帰ってきちゃうこともあったんだよ。 里奈はお母さんともよくけんかするから…。 泊り込みではなかった。昼過ぎぐらいに行って夜遅く帰ってくるそういう感じ。


■困ったこととかあった?
うーん。そのころの担任の先生がすごい厳しい人だったの、よりによって。 それでストレスがたまった感じ。なんかね、いっぱい宿題出してきて、それでストレスたまった。 しかもその人が差別する人でなんかね。自分では平等を考えているとかいってもね。 授業中も自分があんまり好きじゃない生徒がしゃべると「静かにしなさい」って言うのに、自分の気に入っている生徒がいるとその子にあわせてあげたりして。 ちょっと…。

しかもいじめとかに全然対応しないところもむかついた。 なんか、外国人の子がなんかね、いじめられて別の学校に転校しちゃったの。 見て見ぬ振りって言うか。俺は仲良かったからいじめてる人を告げ口とかしたんだけど、先生はせいぜい注意するぐらいで。 なんていうかあんまり関心ない。規則とかには厳しいけど、いじめとかには関心ない先生だった。


■家のこととかお手伝いとかしている?
うん。してたけど…。米とぎと猫のトイレと猫のえさと休日は掃除機かけたり、洗たく物干したりもしてた。 里奈が退院して、元気になってからは、それが半分になったことがちょっとうれしかった。

お手伝いは…。4年生の最後のほうぐらいかな。だいたい5年生ぐらいからはじめた。 最初はやっぱし頼まれて。 なんかいやいややってたけど、癖になったって言うか「やんなきゃだめ」だっていわれて「わかった」って…。 なんかね。それもそれでストレスだった。 反抗してみたりしたかもしれないけど…。


■ストレス解消法は?
ゲームやってた。そのときちょっと、友達と何人かとけんかしたりして。 なんか4年生のクラスで荒れたクラスだったから、友だちと遊ぶよりもゲームする方がストレス解消になった。

里奈は今年のゴールデンウィークに転校した。 (理由は)俺が中学私立に入ったから、里奈も同じ私立に行きたがったので。編入試験受けて。 一緒に行くときもあるけど、俺が動作が遅かったりして、里奈が先に行くときもある。 歩いて3分くらい。まえは25分くらい。里奈はいつも遅刻してた。里奈はあまり走るなって言われてたから。


■里奈ちゃんがどんな病気なのかとかって…。聞いたことある?
あるはあるけど、なんか別になんかこだわり持ってなかったし。 なんか身体が動かなくなる病気っていわれて。エーって最初に。 お母さんが。レックとかいってた気がする。なんか名前がわからわからない。

里奈が3回目の入院の最中。 背骨が曲がってるとか、首になんかこういうのつけたり、ハローベストを着けてたりするから、一体全体どういう病気なんだって思って。 しかもシミみたいのがあるから、里奈って、だからどういう病気なんだろうって。それで聞いてみた。 最初はなんか骨に異常がある病気だと俺が思い込んでた。骨かなんかの病気かなって。 治療しているのを見ながらあれ…って思った。

…。なんか、おれも良くわからない。…なんかね、…里奈ね、…今度ね鼻折れる。 病気とは関係ないんだけど鼻折れそうになったことがあって、ぐちゃぐちゃになっちゃって。 それでね。転んじゃ危ないって言うのもあるし、後ね、なんかね、頭とか打っちゃあぶないんじゃないかな。 普段は別にそんな気にしない。しない。


■辛いこととかあった?
うん。甘えにくい。…。なんか忙しそうだし、う…ん、やや不安定。 それとね、もんだいはお母さんたちよりもっとむかついたのはおばあちゃんとか知り合いの、「里奈ちゃんって入院なさったんですね」「里奈ちゃんかわいそうにね」って。 「おれは?」(力をこめて)。「里奈ちゃんやっと退院したのね」とかいってプレゼントとか持ってきて「おれは?」って。 あんなにがんばったのに…ってそれがある。

おばあちゃんとかにもまず最初に「里奈ちゃん退院してよかったね。心配してたのよ。」って。 そのあと、なんか「あら、加奈ちゃんかわいいわね。ひさしぶりね」って言った後「あら、慎吾ちゃんちょっと太ったわね」っていって、しかもそれだけ!おわり!さびしかった…。 むなしかった。 しかもそのあげくに、そのあと2階に行ってまんが読んだあとにドアをおもいきり開けたらおばあちゃんにあたっちゃって、がーんっておとうさんに怒鳴られて最悪な日だった。 むなしかった。俺だって頑張ってるのに慎吾ちゃんもたいへんだったわねって言われないからむなしい。 ちょっとひどいようだけど嫉妬する。

よくね、あったのはそれとおんなじような現象があって、俺の友達で、病気の子がいてその子に嫉妬するひととかいて、あと、先生のお気に入りの人がいたりして同じようなことがあった。 ちょっとむかついた。それは大変は大変だけど…。 よくボランティア団体とかの手紙とか配られるけど、病気の子どもたちは何とかが大変ですとか言っているけど、あーよく言うね、でもきょうだい児も大変なんだけどね、まったくね。 みたいな感じで、ちょっとむかついた。

それとか、時々学校ってなんか、わざわざ病気のこととかを発表したり、病気のなんかをやってる先生とかを雇ったりして、体育館にみんなを寄せてそれの講演会をやったりしてたんだけど、交通安全の講演会とか、保健の講演会とか、病気の講演会とか、なんか「病気の子は大変よね」、とかいって「おれはー?」って。 何回かそういうことがあった。

なんかあれ、あとね、お母さんの耳が聞こえない子がいて、手話とかやってたんだけど手話でお母さんと話してるんだけど、その子も言ってた。 なんか私だって困ってる…って。 お母さんと、弟の面倒を見ても、あんまし誉められないというか、世間に知れ渡ってないという感じで。 手話の大変さとか?なんか。やっぱ嫉妬してるんだろうけど。その子とそんな話とかしたんだ。 授業参観のときも「慎吾クン、里奈ちゃん大変ね」とか。 「よろしくいっといてね」とか。「がーん、おれは連絡係りか」とか。なんかちょっと「慎吾君も大変ね」とかいってほしい。

まあ、わかんないよね。しょうがないけど。予想もしようもない。 俺だって自分がこうなるまで1回も予想したことがなかった。 病気の子ってかわいそうだなってそれくらい。 おんなじような人がいるとうれしいって感じ。同僚って言うか。 話が合うっていうか。それに反抗期だし、5年生くらいから。ストレスたまるし。

授業参観とかは覚えてないけど…。でも確かきてた気はする。 お父さんが、来てて、まあこれないこともあったけど、時々はきてた。 あんまりそういうふうなことで困ったような記憶はない。 なんか逆に俺、勉強とかあんまりできなかったから授業参観きてほしくなかった。 なんか恥ずかしい。4年生のときに数学で恥をかいた経験があるから。授業参観のときに。

いつも里奈に嫉妬してるけど、まえに里奈が友達から「里奈ちゃんてむかつくよね、病気だからってひいきされてむかつく」っていわれてたことがあって、その女子たちは「くそくらえだ!」って思ったりした。 でもその女子たちの気持ちも、なんかわかる気がする。 それって立場的に言うと、先生が親で、里奈が兄弟で、そのこたちがきょうだい児って言うことであって、今思うと俺とおんなじ感じだなって感じだけど。むかついた。

なんかあと、「何とか菌」とか「障害者」とか言ったりする子がいるでしょ。里奈に言ってるわけじゃないんだけど、そういう時むかつく。ちょっとこいつらむかつく。言葉がいやだった…、障害者のことを略す言い方。 なんだっけ…。「身障」だ!俺最初わからなかったんだけど…。最初は俺もみんなに合わせて使っていたのが後悔した。 でも何気なく使っている友達に激怒するのも微妙…。そのころ陰口とかはやってたから、注意とかして陰口言われたくないから、注意できなかった。陰口いっぱいあった。 略語が増えてる、なんとか菌、なんとかウィルスとか、炭素菌とか、カビが生えるとか、○○菌とか。中学生になっても結局やることはこどもなんだねー。 こんなやつらといっしょにされたくない、とか思う。

じじくさいこといってるみたいだけど、最近の若いもんはって感じ。 漫画にも悪党政治家とかいうキャラクターとかができてて、その特技が、うそをつくことと、税金の無駄遣いとかになっててそんなこと少年漫画に言われてるようじゃ日本だめジャンって感じ。少年雑誌に言われてるようじゃ恥ジャンってかんじ。 それくらいしとこっか。


■インタビューを終えて
闘病児が入院中の慎吾くんの食事のことを聞かれてしばらく考え込んでいました。 なかなか思い出せないようでした。 病名や病態についてははっきりとは言葉では表されませんでした。 「俺も良くわからない」といい、「普段は気にしない」と表現していました。 つらいことがあったかと聞かれ、「家族に甘えにくい」と語るとき、声のトーンが低くなり絞りだすように語ってくれました。 言葉にし難かったのでしょうか。

親戚や学校の友達の家族から、自分のことではなく闘病児のことしか話し掛けられなかったことが寂しかった慎吾くん。 おばあ様とのあるやりとりを事細かに覚えていました。この出来事は慎吾くんにとって印象深いものだったでしょう。 「ひどいようだけれど嫉妬する」という言葉に慎吾くんの葛藤を感じます。 闘病児のことでしか話し掛けられないとき「俺は連絡係りか」と感じていたという慎吾くん。 同じ境遇の人を「同僚」のように感じ、同僚同士にしか理解できない何かを感じているようです。


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